ファルマンの隣の部屋に張り込んでから二日目。大分この埃っぽい空気にも慣れてきたものの一つ言わせてもらうとするならば。
そろそろ味の偏った缶詰にも飽きた、と言ったところか。
一応気を使ってはいるのか差し入れされる缶詰や乾パンは数種類用意されている。しかし毎回煮詰めた豆だの鶏肉だの、ハッキリ言って似たり寄ったりだ。
おまけに塩分もそれなりに高いもんだから、任務とは言えあの大佐は俺を成人病にでもするつもりかと疑いたくなるのは当然だろう。
「ったく…やってらんねぇ…‥」
いつ“客”が殴り込んできてもいいように睡眠も数時間置きの仮眠のみ。
通常のデスクワークに加えこの終わりのないマラソンのような張り込みには正直参っていたりする。
元々じっとしているのが苦手な性分の俺。デートすらもままならない状況にストレスばかりが肥大して。
…‥。
「今頃なにしてんのかなぁ‥。あいつ」
思い出すのは、あの金髪の子供。
自分がこの任務につく少し前、大佐と一悶着あったと聞いた時に仕事を放り出して宿の門前まで走った。
そう。走ったまでは…良かったのだが。
エドワードと揉めた張本人の大佐は何事も無かったようにいつも通り。
その姿を見て怒りを覚えなかった訳じゃない。実際、あの時の俺は忠犬が牙を剥いたような顔をしていただろう。
エドワードを殴った時と同じように、あんたのスカした面も殴り飛ばしてやろうか。
そう吐き捨てた俺にこれでもかと言うほどの微笑みを向けて。
「それでお前の気が済むのなら、いくらでも」
…今考えると、かなり私情に走った発言だったと思う。
俺がエドワードを愛しく思うのと同じくらい、確かに、大佐もヒューズ准将を大切に思っていた筈で。
自分が彼を責める権利など、どこにも無い。
寸前まで出かけた拳を引っ込めすぐに向かった宿の前で、ふと思った。
俺はエドワードに会って何をするつもりなんだろう。
抱き締める?
慰める?
哀れむ?
…‥きっとエドワードは、そんな事を望まない。
そんな事を望むほど、甘ったれた奴じゃない。
そう思った途端、今までの自分が一人芝居だったようで無力感に襲われた。
結局‥いつも肝心なところで力になってやれない自分。
こんなにも吐きそうで胸が締め付けられたように苦しいのは、煙草が切れたからだと馬鹿な自分に言い訳して。
負け犬のように帰った俺に、笑みに歪んだ大佐の口から発せられた一言。
「任務だ。ハボック少尉」
+++++
…今は何時頃だ?
室内が薄暗い所為で時間の感覚が掴めない。
時折フュリーと無線で連絡を取り合う以外人との交流も無いため退屈を紛らわせるように煙草の本数ばかりが減っていく。
僅かに開いたドア下の隙間から煙が出ていくのをぼんやりと見つめながら、ふと見慣れたようで懐かしい靴が覗いている事に気付いた。
…‥まさか。
いや、でも。
あいつが此場所を知っている筈がない。
だとすれば敵の罠か。
煙草を咥えたまま息を潜め、脇腹に挿してある愛銃に手を触れた。
‥大丈夫、やれる。
右手にそれを構えてジリジリとドアに近付く…と同時に、ノックの音が響いた。
コンコン。コンコン。
ノックの音とリズムが妙に耳に馴染んでいる。
おかしい。
首を傾げつつドア横の壁にぴったりと体を貼り付け、一気にノブを回して開け放った。
「‥しょ…、…‥っ!?」
ガチャリと突きつけた銃越しにお互いの驚いた顔が目に入る。
そこに立っていたのは、紛れもないエドワード・エルリックその人。
おいおいおい…!!どうなってんだ!?
混乱する頭を一先ず脇に追いやって、片手でエドワードの口を塞ぎながら部屋の中に引きずり込んだ。
後ろ手でドアを閉め鍵を降ろし、深々と溜息を吐く。
し、心臓にわりぃ…。
「む、む〜〜っ!!!!」
「あ、悪い」
はっと気が付き、塞ぎっぱなしだったエドワードの口を慌てて解放する。
「ぷは、は〜…」
「‥……」
やっぱり何処からどう見ても、エドワードだ。
‥少し見ない間に随時と大人っぽくなったな。
「‥…少尉…、」
驚きと軽い酸欠で染まった顔を俺に向けて、申し訳無さそうに目を泳がせる。
「ごめん…なさい‥。…邪魔して‥」
次第に俯いていく頭に躊躇いながらも手を乗せて、がしがしと撫でてやった。
いつもと、同じように。
「…それより、お前どうやって此処に来た?場所知らない筈だろ?」
「‥その‥…、…た、立ち聞きしちゃった…」
「…‥立ち聞きって‥」
中尉と大佐の話…か…‥?
「ねぇ‥…」
つんつんと、服を引っ張るエドワードに思考を中断させて顔を上げる。
「…怒って‥る‥…?」
その泣きそうな顔で見つめられんの、弱いって知ってるだろ。
「…此処に無断で来た事は怒ってる」
「……‥っ‥、」
唇を噛んで怯えた顔をする相手を見ながら、口元のマスクを下げた。
「でも、会えて嬉しい。‥…来てくれて、ありがとな」
握ったままだった拳銃をその辺に放り、衝動に任せてそのまま抱き寄せる。
すっぽりと腕に収まる体は以前とさほど大差はなくて、少しホッとした。
どれほど、この体温を求めたか自分でも分からない。
会いたくて会いたくて気が狂いそうだったのは、俺の方だ。
「しょ…‥、‥ジャン…っ、」
呼ばれたファーストネームに理性が飛ぶ。
顔を上げたエドワードの頬に涙が伝っているのも構わず、半ば無理矢理口付けた。
「ん、ん…‥、」
肩にしがみついていた腕を首に回させて腰を強く抱き寄せる。
いつもなら逃げ腰な相手も相当限界だったのか、舌を挿し入れてやったら自分から絡めてきた。
「…‥、ぅ‥む…」
…このまま、最後までやってしまおうか。
さっきフュリーと連絡を取ったときも“客”が来る様子は無かったし。
一先ず2人分の唾液に濡れるエドワードの唇を舐め上げて、名残惜しいが一旦中断することにした。
「ぁ…、ジャン‥?」
紅潮した頬が
潤んだ瞳が
ぽってりと赤く濡れた唇が
俺を誘う。
浅く漏れる息遣いさえも。
「……‥いい‥?」
正直もう後に退けないところまで煽られていたのだが、一応確認の意味で問い掛ける。
きっと、帰ってくる答えは俺と同じだと思うけれど。
「ん、‥…して…。‥早く欲しい…っ」
催促の言葉を吐息と共に吐き出し、首に絡ませた細腕に力を入れるエドワードを膝に抱き上げ、同時にマスクを完全に外す。
現れた俺の硬い金髪を愛おしそうに撫でる相手に余裕の無い笑みを見せて、コートを性急に脱がせた。
「…今日は中に挿れる余裕…‥無いぜ?」
最後までやりたいのは山々だったが、いかんせん時間の余裕が無さすぎる。
それにエドワードの負担も久しぶりと言うことで考えなければならない。
「‥いい、いいから…っ、はやく‥、」
泣いているかと思うような声で訴えるエドワードの額に、ひとつ口付けて。
内側に着ている上着も脱がせると、黒のタンクトップを捲り上げた。
「ぁ‥…、」
薄い胸の上にある小さな赤い膨らみを舌先で舐め上げる。
捲ったタンクトップは鼻先で押さえ、自由になった左手はもう片方の突起を捉えた。
「は‥ぁ…っ」
頭上から降ってくる熱っぽい吐息。
ぷくりと可愛らしく勃ち上がってきた突起を咥内に誘い込み、舌を絡ませれば俺の頭を抱え込んだ腕の力が強くなって。
左手は乳輪の辺りを焦すように何度も指の腹で撫でる。
「ゃ…、ジャン…‥、」
「っ、こら…、」
流石に焦れたのか、その先を求めてエドワードの手が俺の股間に伸びた。
…やばいって…‥。
「…おっき‥…」
興奮で染まった頬を更に赤らめ、服越しに俺自身を撫で上げる。うっとりとしたその表情は先ほどまで泣いていたとは思えない。
小さな柔らかい左手に何度か撫でられるうちにいよいよ硬く張り詰めた俺のモノを、服の下から引きずり出して直に扱いてくるもんだから堪らなかった。
「っ…、エド…‥」
「ね、気持ちい‥…?…、ぁ、ちょ‥っ」
このままでは埒があかないと未だ上下に擦られている俺自身を放って相手のズボンと下着を一気に膝の辺りまで脱がせる。
飛び出した幼いピンク色の自身はとろとろと先端から嬉し涙を垂れ流していた。
「気持ち悦かったのはお前だろ。…こんなにしといて」
先から零れ落ちる先走りを裏筋の辺りから指で掬う。
「ひゃ…ぁっ…‥」
ぞくぞくと背を戦慄かせながら更なる刺激を求めて俺の手のひらに勃ち上がった自身を擦り付けてくるのだから、相当気持ち悦いらしい。
「‥なあ、2人で悦くなる方法あるんだけど。‥…やる?」
手っ取り早く欲望を解放するには、一番の方法。おまけに中へ挿れる必要もない。
「ぁ…したぃ‥っ、ジャンも気持ちよく…なるんでしょ‥?…ゃっ‥」
その言葉を聞いて今まで向かい合わせに座っていたエドワードの体を反転し、壁の方を向かせるように俺の膝を跨がせた。
そうすると丁度エドワードの太股の間から猛った俺自身が顔を出すという状態になる。
卑猥な光景にエドワードがいやいやとかぶりを振った。
「な、にこれ…っ、はずかし…‥っ//」
「いいから。‥…ほら」
顔を赤くして涙目になる相手を余所に、開いていた足を無理矢理閉じさせて。
…、初めてだけど結構視覚的にもクるもんだな。
「やんっ//、ゃ…変なかんじ‥するっ」
「そのまましっかり足閉じてろよ」
後ろから囁いて、三つ編みを縛っているゴムを外しながら軽く揺さぶりをかける。
既に先走りで太股の間がぬるぬるになっている事もあり、思っていたよりもスムーズに自身が擦れ合った。
エドワードの小さな欲望は俺の太いカリ首に引っ掛かってぷるんと震えながら蜜を零す。端から見れば笑えるくらい可愛いのだが本人にそんな余裕は無いだろう。
シュ、シュ、と下から擦り上げる度にいやらしい音が響き、それすらも堪らないのか持て余した手で俺の腕を掴んだ。
「ぁ、あんっ…//ジャ‥ン、動いちゃ…やぁ…」
「バカ…、動かなかったら出来ねぇだろ」
もどかしい刺激に理性を飛ばすことも出来ないらしく、半端な羞恥心だけが残ってエドワードを苦しめる。
揺さぶりながら暫し考えて、俺はエドワードの生身の左手を股間に持っていった。
「…‥!?//な、なに…す…//」
「ココ、握って」
“ココ”とは突き出た俺自身とエドワードのソレ。
自分の手も上から添え、先走りを手のひらに絡ませてぐちゅぐちゅと扱き上げる。
「ゃ、や、ぁん…っ//きもち……っ」
重なる分身同士を擦りながら空いた片手でツンと勃った胸の突起をこねくり回し、耳裏からうなじの辺りまでを舌で愛撫した。
そのうちに俺が手を離しても自分から率先して酔ったように扱き始めるエドワード。
口の端から唾液を垂らし恍惚とした表情で張り詰めた2つの欲望を扱う様は十分に俺の下半身を刺激してくれる。
キツく閉じられた足の間でビクビクと脈打つ自身に相手も気付いたのか、涙の筋を残した顔を後ろに向けた。
「は、ぁあんっ…、ジャン‥ぃきそ…?」
「…‥、ん…、」
そろそろ、と呟きながら頷き、激しく腰をスライドさせれば突然の強い刺激にエドワードが息を飲む。
元々限界近いところを引き延ばしていたのだから俺よりも大分辛いだろう。
指を口に含み唾液で濡らした指でコリコリと突起を可愛がりながら、ラストスパートを掛けて耳朶に甘く噛みついてやった。
「ぁ、あ、ァ…っ!!ィ、イっちゃうぅ…‥っ!!!」
そう喘ぐ手は今までにない早さで上下に動き、絶頂を促して先端を抉る。
「っ‥…く、‥」
「ひゃ、あぁあああ─────っ!!!!!」
ほぼ同時に吐き出した白濁に濡れ、ビクビクと痙攣するエドワードの体を片腕で支えながら俺は心地よい倦怠感に目を閉じた。
「あのさ」
乱れた衣服を整え、煙草に火を点けながら声を掛ける。
「なに?」
珍しく甘えて俺の胸板に顔を埋めながらエドワードが返事をして。
言おうか言うまいか迷ったが、思い切って訊いてみることにした。
「‥…肝心なとこで何も出来ない男って、どう思う?」
「…‥」
回された腕に、力が籠もる。‥…と、同時に。
「い、いてててっ!!!!っに…すんだよお前は!!」
背中の辺りを思いっきり抓られて悲鳴を上げる俺なんかお構いなしに、額を擦りつけてくるエドワード。
「ばか…‥っ」
漏らした悪態は涙声。
思わず怯んだ俺の顔を見ずに、ぽつりと。
「…オレなんかを待っててくれるのは‥、あんたくらいしかいないだろ‥……っ」
帰った時には、なにも言わず、何も訊かずに、‥抱き締めてくれるのは。
「…エドワード‥……」
「なにも出来ないなんて、言わないでよ」
ゆっくりと持ち上がった顔が近付く。
啄まれた唇が離れた直後に、紡がれた言葉。
「オレが帰ってくるのは、…あんたがいるからなんだよ。‥ジャン」